中小機構

スタートアップエンジェル連携推進協議会

コラム

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第2回

エンジェル投資家と
エンジェル税制について

「エンジェル投資家」という言葉を耳にする機会も増えてきました。特に、起業を志している人にとって、資金調達はビジネスを続けるための生命線。起業直後の小さな会社に対して資金を提供するエンジェル投資家の存在は、非常に心強いものです。

この記事では、エンジェル投資家とベンチャーキャピタル(VC)の違い、エンジェル投資家とクラウドファンディングの違い、エンジェル投資家の資金を受け入れる方法、エンジェル投資家増加の背景にある「エンジェル税制」など、エンジェル投資家についてあらゆる角度からわかりやすく解説します。

特に、シードステージで投資を受けたいと考えている方は、参考にしてください!

エンジェル投資家とは

まずは、エンジェル投資家とはどういう存在なのかについて確認しましょう。

エンジェル投資家とは、起業直後の小さな会社を支援する個人の投資家のこと。有り体に言えば、「お金を持っている方」が資金を提供してくれるということです。

起業直後の会社の場合、実績がない状態なので、金融機関から一定額以上の融資を受けるハードルは高いです。飲食業など一般的な事業の場合は収支モデルや成長予測を立てやすいのですが、IT関連やライフサイエンス関連ベンチャー企業など新しい技術を生み出そうとしている企業の場合は、黒字化まで数年かかる場合も往々にしてありますし、将来予測が難しいという特徴があるからです。

そこで登場するのがエンジェル投資家。個人の資産家なので、金融機関のように厳しい審査が行われるわけではありません。起業家の意欲や、面白いと感じるかなど、一人ひとりによって判断基準が異なります。そのため、投資先は非常にバラエティに富んでいます。自身の目利きにより「これは」と思う起業家たちを支援し、株主として起業家に様々なアドバイスや人脈の紹介などを行う投資モデルです。数年後、会社が成長した段階で株式を売却することで、多くの利益を得ることを目指しています。

融資ではなく投資(出資)なので、返済の必要がないという点も、起業家にとっては大いに注目したい点です。

エンジェル投資家は、どんな人たち?

エンジェル投資家は、いわば個人のお金持ち。エンジェル投資家になるのは、自ら起業した会社を上場させるなどしてキャピタルゲインを得た起業家や経営の一線から退いた実業家が多いです。自分自身も起業家として活動していた過去があるので、後進の育成を重視したいという気持ちがあります。

そのため、新しい分野に挑戦し、何かを成し遂げようとしているハイリスク・ハイリターンな事業計画にも投資する余裕があります。

エンジェル投資家の果たす役割

エンジェル投資家が果たすのは、金融機関からの融資を受けにくい企業を支援すること。金融機関は実績のない新規事業についての一定額以上の融資は慎重ですし、ベンチャーキャピタルは起業直後のいわゆるスタートアップに対する投資は原則として行いません。

資金調達に苦しみがちなスタートアップ企業を、柔軟に幅広く支援することができるのが、エンジェル投資家の強みでもあります。

エンジェル投資家の得意な業種

エンジェル投資家の多くが好むのは、ハイリスク・ハイリターンのビジネス。そのため、インターネット関係や創薬・医療機器・ヘルスケアなどの医療関係ビジネスに多く出資する傾向があります。

これらの業種は、形になるまでに時間がかかりますが、一度経営が軌道に乗ると大きく化ける可能性を秘めています。そうなったときに、株式売却などで大きな利益を得ることができるのです。

エンジェル投資家とVCの違い

エンジェル投資家と同じく、株式上場前の若い企業に投資をする存在として、「ベンチャーキャピタル(VC)」が挙げられます。この2つには、どんな違いがあるのでしょうか。

個人か法人かという違い

エンジェル投資家は個人として投資を行いますが、VCは法人またはファンド(投資事業組合)として投資を行うというのが大きな違いです。

個人で投資を行うエンジェル投資家の場合、個人資金を投入することもあり、投資家と経営者の距離が近くなりがちです。人脈やアドバイスの提供を得られるというメリットはありますが、経営の仕方などへの口出しが多くなるケースもあります。出資者と一緒に会社を作り上げていくイメージが近いかもしれません。

一方、VCは投資家の資金を集め、法人として将来有望な企業に投資をします。銀行などのようにビジネスライクな関係性になるため、その分審査もシビアになる傾向があります。

出資金額の規模の違い

エンジェル投資家の投資規模は数百万円から数千万円。個人資金からの投資となるので、出資額としては比較的低くなります。

VCは複数の投資家から資金を集めてファンドを組成したうえで投資を行い、会社としての経費も大きいので、それをカバーするために投資規模が大きく、最低5,000万円程度から数億円規模の出資が行われます。またファンドの期限があるため、ある程度の期間内(一般的には3~7年)に確実なリターンを出すことが求められます。

審査の違い

エンジェル投資家は個人で投資先を決めるので、審査はありません。経営者の熱い想いや事業の将来性など、いかに投資家の心を掴むかが重要になります。

一方VCは、投資家の資金をファンドという形で運用する必要があり、投資額も大きくなります。そのため、将来性のある事業かどうか金融機関と同様の審査が行われます。長期間のプロセスを経て投資するかどうかを決めるので、決定までに時間もかかります。

出資ステージの違い

エンジェル投資家とVCは、投資先に対して違うものを求めています。そのため、出資ステージが異なるビジネスモデルといえます。

エンジェル投資家は、VCが投資対象として取り上げる以前の早い段階に資金を注入してハイリスク・ハイリターンを目指すモデル。創業したての時期に必要な成長資金を確保するのに向いています。

VCは、比較的リスクを少なくし、確実なリターンを求めるビジネスモデル。ある程度成長した企業が拡大するのに必要な資金をまとめて集めるのに向いています。

もちろん、必ずこういった違いがあるわけではありません。あくまで傾向としての話ですが、こういった違いがあることを把握しておくと、どちらを選ぶかの判断基準に役立ちます。

エンジェル投資家と
クラウドファンディングの違い

起業直後の資金調達方法としては、他にも「クラウドファンディング」が考えられます。クラウドファンディングとは、不特定多数の人に資金提供を募り、ビジネスの支援を受ける仕組みのことです。

それでは、エンジェル投資家とクラウドファンディングの違いを見てみましょう。

資金調達方法の違い

エンジェル投資家は、個人の資産家が支援したい起業家に数百万円から数千万円の資金を投資するビジネスモデルであることはすでに述べたとおりです。投資された資金は、株式などを発行して受け入れます。

クラウドファンディングには、エンジェル投資に近いものからリターンを求めない寄付に近いものまで様々な類型がありますが、共通するのはインターネットを通じて不特定多数から資金を募る仕組みであること。起業家自身がプロジェクトを立ち上げ、それに賛同した人が比較的少額の資金提供をします。

クラウドファンディングで資金調達を成功させるには、インターネット上で発信される経営者の想いがいかに共感を呼ぶかが重要です。どちらかというと、ソーシャルグッド(社会的に価値のある)ビジネスの方が賛同を得やすいという特徴があります。うまく多くの人の心を掴むことができれば、短期間で大きな金額を得ることができます。

リターンの違い

エンジェル投資家が投資先に求めるリターンは、金銭です。投資と引き換えに企業の株式を保有し、株式上場や買収のタイミングで売却などをすることで利益を得ます。ハイリスク・ハイリターンな投資モデルと言われるのも、このリターンの特性が理由です。

一方クラウドファンディングの場合は、類型によっては金銭的な見返りではなく、モノやサービスによってリターンを提供することもあります。資金調達するビジネスが株式上場や企業買収の対象となる事業かどうかによって使い分ける必要があります。

お金以外のサポートの違い

エンジェル投資家には経営者や元起業家が多く、投資を通じて利益を求めるだけでなく、後進の育成に力を入れているという特徴があります。投資家自身の知識や人脈をもって経営をサポートするので、経験の少ない起業家にとっては大きな後ろ盾となりえます。経営への影響が大きいという懸念はありますが、アドバイスを得られるのは非常に有益です。

一方、クラウドファンディングの場合、不特定多数が対象となるため金銭以外のサポートは期待しにくいという特徴があります。

エンジェル投資家の資金を受け入れる方法

では、エンジェル投資家から資金援助を受けたいと思った場合、どのような方法があるのでしょうか。エンジェル投資家から資金を受けるまでの方法について見ていきましょう。

株式会社において資金を受け入れる場合

株式会社の場合、投資資金を受け入れる際には「第三者割当増資」と「転換社債型新株予約権付社債(CB)」が使われることが多いです。それぞれ簡単に説明します。

第三者割当増資とは、株式会社の資金調達方法の1つで、既存の株主以外(含んでも構わない)の第三者に対して募集株式を割り当てる方法です。簡単に言うと、新株を発行することで増資する方法です。資本金が増えることになるので、自己資本比率が高まり、対外的な信用度も高くなります。

転換社債型新株予約権付社債(CB)は、一定の価格で株に転換する権利がついている社債を引き受けてもらう権利と引き換えに、資金を受ける方法です。エンジェル投資家自身が、定められた期間中に株にするか社債として持つか選ぶことができます。第三者割当増資により投資する場合、投資家は株主になりますが、CBで投資する場合、投資家は社債を株式に転換するまでは株主ではなく債権者という立場になります、投資先が倒産したときなどは株主より債権者のほうが優先して資金回収ができるので、いきなり株式で投資するのはリスクが高いと判断されるとCBを選択するケースが多くなります。

第三者割当増資の場合も、転換社債型新株予約権付社債の場合も、発行会社では株主総会の決議(非公開会社で、定款に特別の定めがない場合)が必要になります。

エンジェル投資家と出会う方法

エンジェル投資家と出会う方法としては、紹介が一番多いというのが実情です。しかし、すべての人がそういった人脈を持っているとは限りません。他にも、エンジェル投資家と出会う方法をいくつかご紹介します。

まずは、自分からエンジェル投資家に連絡を取ることで支援を募るという方法です。SNSや投資家のブログなどから連絡してみましょう。必ず返信が来るとは限りませんし、確率としては低いかもしれません。ですが、熱意をしっかり伝えることができれば、興味を引ける可能性はあります。最近では起業家とエンジェル投資家をマッチングさせるウェブサイトもいくつか立ち上げられています。

また、ピッチイベントや交流会に積極的に参加することで、エンジェル投資家との面識を広げるのも重要です。直接会って話ができるので、その場でいい出会いが見つかるかもしれません。他の投資家を紹介してもらえるなど、人脈も開拓することができます。 いずれにせよ、自分から積極的に情報収集して働きかけをしましょう。

エンジェル税制とは

エンジェル投資家が増えてきた背景には、国が「エンジェル税制」を設けて施策として後押ししてきたという状況があります。エンジェル投資家として資金提供をすることが所得税の優遇につながる環境が整っているのです。

具体的には、一定の要件を満たす創業して間もない企業に株式投資を行った投資金額について、エンジェル投資家には課税対象となる所得金額から控除される、株式譲渡益から控除されるなどの税制優遇が用意されています。また、当該企業の株式を売却し、損失が発生した場合における優遇措置もあります。

エンジェル税制で
受けられる税制優遇

エンジェル税制では、投資した年と売却した年において所得税の優遇措置を受けることが可能です。

<投資をした年に受けられる優遇措置>

○優遇措置A:
設立3年未満の新しい事業を実施する企業に投資した金額が、総所得金額から控除(ただし、上限 1,000 万円と総所得金額×40%のいずれか低い金額が上限)できます。

○優遇措置B:
設立10年未満の新しい事業を実施する企業に投資した金額全額が、その年の株式譲渡益から控除できます。

<株式を売却し損失が発生した場合の優遇措置>

対象企業の株式を売却して損失が生じた場合、その年の他の株式譲渡益と通算できるだけでなく、その年に通算できなかった損失を翌年以降3年にわたって繰り越し、順次その他の株式譲渡益と通算できます。
(注)ただし、上記の優遇措置Aまたは優遇措置Bを受けた場合には、その控除対象金額を株式の取得金額から差し引いて売却損失を計算します。

これらの優遇はエンジェル税制の対象とならない非上場の会社への投資をした場合と比べるとわかりやすいです。

本来、非上場株式に投資をした場合には、投資時点では税の優遇は一切ありません。また売却時点において損失が発生した際にも、同じ年に他の非上場株式の譲渡益がある場合しか損益通算をすることができません。(平成28年以降は非上場株式と上場株式との譲渡損益の通算はできなくなりました)。

これがエンジェル税制の対象となる非上場株式への投資であれば、投資をした時点で、その同じ年の他の株式の譲渡益から投資額全額を控除することが可能です(優遇措置B)

また売却時点で投資額に満たない金額で譲渡し損が発生した場合には、その後の3年間における上場株式を含むその他の株式の譲渡益と通算することが可能となります。

また設立3年未満で一定の要件にあう企業への投資という場合には、給与所得や事業所得などのいわゆる総合所得(総所得金額)から投資時点で一定額を控除するという優遇措置も用意されています。(優遇措置A)

エンジェル税制の対象となる
ベンチャー企業

前述した通り、エンジェル税制で優遇を受けられる対象となる投資先は、設立10年未満の中小企業です。

「中小企業」とは、中小企業基本法で定められた企業のことで、業種によって資本金・従業員数の要件が決まっています。例えば、サービス業であれば資本金5,000万円以下または従業員100人以下の企業が該当します。

また対象となる投資先の設立からの経過年数によってさらに要件が細分化していて、
・研究者あるいは新事業活動従事者の人数
・直前期までの営業キャッシュフロー
・収入に占める試験研究費(宣伝費、マーケティング費を含む)の割合
・売上高成長率
などにおいて一定の要件を満たす必要があります。

さらに外部からの投資を1/6以上取り入れていること、大規模法人(資本金1億円超等)及び当該大規模法人と特殊の関係にある法人の所有に属していないこと、未登録・未上場の株式会社で、風俗営業等に該当する事業でないこと、も満たす必要があります。

詳細は、中小企業庁のページでご確認ください。 http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/chiiki/angel/subject/index.html

創業まもない企業は、自分がエンジェル税制の対象になっているかの事前確認を受けることができます。あらかじめチェックを受けておけば、エンジェル投資家へのアピールも簡単です。

エンジェル投資家の要件

この税制を利用するためには、投資先の要件だけではなく、エンジェル投資家自身についても以下の要件を満たす必要があります。投資した年・売却した年に共通な要件です。

・金銭を払い込み、対象企業の株式を取得していること。他人から譲り受けた株式や、現物出資により取得した株式は対象外です。
・対象企業が同族会社である場合、持ち株割合が第3位までの株主の所有割合を順に加算し、その割合がはじめて50%を超える時におけるその株主に属していないこと。

エンジェル税制の
メリット・デメリット

ここまで解説してきたエンジェル税制ですが、これを利用することで企業側・エンジェル投資家側にどのようなメリットがあるのでしょうか?

創業まもない企業にとっては、個人投資家からの投資が受けやすくなるということが最大のメリットです。エンジェル投資家による投資は、金融機関からの融資と違って返済の必要がありません。資産自体が増えるので、自己資本比率が高まり、対外的な信用力もアップします。

また設立3年未満の企業で要件に該当すれば、その投資により投資家側で給与所得や事業所得などの総所得金額からも控除が可能となる減税措置が受けられますので、株式投資になじみのない友人や知人からも出資を募りやすいということが言えます。

またエンジェル投資家にとっては、投資した年に所得税の優遇措置が受けられるというのが最大のメリット。投資に対しての心理的ハードルも低くなります。

唯一デメリットと言えるのは、エンジェル税制の対象となるのかを確認する必要があるということ。それをクリアするためにも、エンジェル投資家についても投資を受ける企業側にとっても、制度を十分に理解して、早めに経済産業大臣からの確認書をもらうようにしましょう。

まとめ

日本ではまだ認知度の低いエンジェル投資家ですが、エンジェル税制の後押しもあり、確実に裾野が広がりつつあります。起業家にとって、創業してすぐの時点で資金提供を受けることができるエンジェル投資家の存在は、非常に頼りになるものです。

起業資金というとベンチャーキャピタルや金融機関からの融資を考えがちですが、エンジェル投資家を活用する方法についても考えてみてください。

資金提供を受けられるだけでなく、多くの投資・経営経験があるエンジェル投資家から、多くのことを学べるはずです。

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