中小機構

スタートアップエンジェル連携推進協議会

コラム

 

第3回

SANAにSANADAが答える!
「エンジェル投資の本当のところ」
不屈の起業家KLab真田哲弥はこう投資する

こんな起業家にエンジェル投資家は投資したい

真田 哲弥(さなだ てつや)プロフィール
KLab株式会社 代表取締役会長兼社長 CEO

1964年、大阪府生まれ。関西学院大学在学中に、合宿制運転免許学校のあっせんビジネスを起業。大学中退後、ダイヤルQ2を利用した情報提供会社を設立し、短期に成長を遂げるも、事実上の倒産を経験。1997年に株式会社アクセス(現:株式会社ACCESS)に入社して会社員生活を経た後、1998年に株式会社サイバード(現:株式会社サイバードホールディングス)を設立し、取締役副社長CTOに就任。2000年に株式会社ケイ・ラボラトリー(現:KLab株式会社)を設立し、代表取締役社長 CEOに就任。モバイルゲーム分野に事業転換したことなどにより、急成長を果たし、2011年に東証マザーズ、翌年東証一部へ上場。2018年3月より現任。 現在は、若いベンチャー企業に投資をするエンジェル投資家としても活躍している

VCの投資は「勉強」で、エンジェル投資は「応援」

—まずは基本的なことからお伺いしたいのですが、ベンチャーキャピタル(以下VC)が行う投資とエンジェル投資は、どのような点に違いがあると思いますか?

真田:まず挙げられるのは、「業として投資をしているかどうか」です。
例えば、VCは株式や債券など、保有している資産を売却することによって得られる売買差益、いわゆる「キャピタルゲイン」を得るために投資をしています。そのために起業家の社会的な評価などをチェックしています。業でやっている以上、当然のことです。

それに対して、エンジェル投資は「応援するための投資」です。 投資家自身が起業家に魅力を感じるかどうか、事業内容が投資家自身がやりたかったこと、実現したかったことかどうか、という点で判断して投資をすることがあります。

もう一つはお金の違いです。 VCは出資者から集めたお金を使って運用します。出資者からお金を募っている以上、先ほどお話ししたキャピタルゲインを創出しないといけませんよね。

対して、エンジェル投資は100%自分自身のお金です。投資用にお金を用意しているわけではありません。起業家と事業が魅力的だからこそ投資をするので、VCのような億単位のお金ではないですが、正直「返ってこなくても大丈夫。むしろ返ってきたらラッキー」と思えるような金額で投資をしています。エンジェル投資はそのぐらいの感覚がちょうどいいと思います。

また、VCやCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)が行う投資は、例えばAIや暗号通貨といった対象となるベンチャー企業が主戦場としている業界や技術を知りたい、という「勉強」の為に投資をする場合があります。

対して、エンジェル投資にはそういう要素は少ないですね。起業家に魅力を感じるかどうか、事業内容が投資家自身がやりたかったこと、実現したかったことかどうかで投資をします。

VC、エンジェル ココが違う

  VC エンジェル投資家
投資のスタンス 本業としてキャピタルゲインを得るため 本業ではないが故に「好きな」起業家に投資する面がある
資金 自己資金だけでなく外部の資金も入るケースが多い 100%自身の資金
投資の決め手 ・キャピタルゲインの大きさ×確率で判断 ・CVCの場合業界や技術を知りたい情報収集の面 ・起業家の人物評価もするがあくまで一要素。惚れ込むことを戒める。 ・起業家に魅力を感じるかどうか ・自分がやりたかった事業をやってくれるか ・その起業家に惚れ込むという要素

—なるほど。真田さんは、投資をする際のポリシーはありますか?

真田:本当に初期段階のベンチャー企業に投資をするようにしています。 これよりも成長したベンチャー企業だったら、VCや大手企業のCVCなどがあるので、そちらに相談しても良いと思いますので。

—そんな決まり事があるんですね。ちなみに、お金以外でご自身の知見が生きたりもするのでしょうか?

真田:その点は大いにあります。 もともと、自分自身がやりたかったこと、興味があったものに魅力を感じて出資をするわけなので、アドバイスも込みで出資をするケースも多いですね。

—真田さんの方も、若い起業家の考えに触れて、刺激を受けそうですね。

真田:もちろん、それもあります。
実は、私が今まで関わってきた業界って、私と同い年かそれ以上の経営者って今あまりいないんですよ。引退しているか、エンジェル投資家になっていることが多いんです。しかも、今は30代・40代という若い年齢でエグジットして引退するケースも増えてきました。

若い人は、どちらかというとエグジットしても次の起業、シリアルアントレプレナーとして、頑張って欲しいなという思いはあります。

自分自身は、経営者として活動していくことに価値があると考えています。 エンジェル投資で若い起業家を応援もしますが、経営者として活躍していたいのです。 経営は精神が老いるとできません。若い考えに触れて刺激を受けるために、エンジェル投資をしている、とも言えますね。

真田さんにとってのエンジェル投資のメリット

  • ・キャピタルゲイン
  • →当たればラッキー。そこまで期待しない。

  • ・若い投資家に触れることで刺激を受ける。能力、感性がフレッシュになる。
  • エンジェル税制は、投資家の裾野を広げる良い制度

    —ところで、真田さんはエンジェル税制を利用していますか?

    真田:利用しています。エンジェル税制は、対象であれば使うスタンスなので、毎回利用するわけではないのですが、良い制度です。

    日本人は貯蓄好きな傾向があるため、資産運用を行うための資金である「リスクマネー」にお金が流れない構造になっています。 エンジェル税制は、投資を行うことで減税となる制度なので、エンジェル投資の裾野を広げる意味では価値があると思います。

    —エンジェル投資ですが、今後はどのようになっていくと思いますか?

    真田:間違いなく増えていくと思います。

    なぜかというと、いち起業家が手がけていた案件を大手企業や別のベンチャー企業が買収するようになり、いち起業家は若くして大金をもてるようになったからです。

    数年前まで、エグジットはIPOが一般的でした。それが、M&Aでエグジットとすることが増えてきています。
    先ほどもお話ししましたが、30代・40代という若い世代でエグジットした起業家が、エンジェル投資家となるケースが増えてきました。そういう方々が、後進のベンチャー企業に投資をする、という流れが出来てくると良いですね。

    以前(2010年頃以前) 現在~(2010年代以降)
    エグジット方法=IPO
    →IPOは年間100社未満
    エグジット方法=IPO+M&A
    →従来のIPOに加えて、M&A。
    M&Aははるかに数が多いので確率が上がる。

    案件に惚れることがエンジェル投資の醍醐味

    —ありがとうございます。では次に、投資家目線でのお話を伺います。最初にエンジェル投資をする際の注意点はなんでしょうか?

    真田:金融の世界では、「案件に惚れるな」という言葉があるそうです。案件に惚れてしまうと盲目になってしまうので、良いところも悪いところも含めて客観的な立場で観察しましょう、という考えですね。

    エンジェル投資は逆です。「惚れた案件しか投資するな」です。 そうじゃないとつまらないじゃないですか。何のために投資をしているかわからないですよ。ただ単純に「儲けたい」という話なら、投資以外にもっと選択肢はいっぱいあります。

    それに、自分が好きなところ・知見があるところに投資をするわけですから、アドバイスをすることで起業家を助けてあげることもできますよね。

    エンジェルからのアドバイス(投資家に向けて)”惚れた”起業家からお金が返ってきたらラッキーのつもりで投資しろ!

    —では、投資を受ける起業家の目線で伺います。投資を受ける際に注意しておきたい点はどこでしょうか?

    真田:投資を受ける際には、ビジネスのアドバイスをしてくれる人に投資してもらったほうがいいと思います。

    例えば、有名な企業の社長の中には、自分がやっているビジネス以外はアドバイスができるほど知見をあまり持っていない人もいます。逆にVCに勤めている人でたくさんの案件に触れてきたから様々な知見を持っている人もいます。一概には言えませんが、「この人はビジネスのアドバイスをしてくれるだろうか?」という点を見極めることが必要だと思います。

    エンジェルからのアドバイス(起業家へ向けて)
エンジェルからは資金以外のものももらおう。信用、経験、人脈の価値はお金以上。

    起業家には、投資家を「面白い」と思わせる何かを見つけてほしい

    —なるほど。では、エンジェル投資を受けるために、起業家はどのようにアピールしていくべきでしょうか?

    真田:自分が投資をする時は、やはり人を見ています。夢だけを語る人には投資しませんし、夢を語ることができない人にも投資しません。まずはどのような人なのかを見て、それに見合う事業の計画などがあるかどうか、ですね。

    例えば、「甲子園に行きたいです」と言っていても、それに見合う練習をしないといけないですよね。それに、どんな練習をしているか、も説明できるようにしておかないといけません。

    また、アイドルのオーディションなどは、かわいいだけでなく、キャラクターを含めた様々なものを審査して選びますよね。投資家もそういう面があって、光るものがあって、これは面白いと思わせる「何か」がないといけないと思います。
    大きな夢を語れて、夢を裏付ける努力や力、才能の輝きがある人に投資をします。 起業家の皆さんも、その点を意識してほしいですね。

    エンジェルからのアドバイス大きな夢を語れないと投資しない。夢を裏付けるモノがなくても投資しない。両方揃ってエンジェルの心は動く。